ホームズ/ワトソン

2010_SherlockHolmes,[R18]

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微睡み

石鹸の匂い。漂ってくる湿った熱気。
その感覚から導き出されるのは、清潔感だ。
数時間前のすえた悪臭がきれいに消えていることに、ワトソンは内心安堵して寝返りを打つ。
一週間も貧民街に潜っていた同居人は、襤褸を脱ぎ捨てただけで当然の顔をしてワトソンの部屋へ入ってこようとした。それを蹴り出したのが少し前。
ホームズがなんのかんのと手間取る入浴を済ませたころには、ワトソンはベッドに入って寝息を立てていた。
といっても軽く微睡んでいた程度で、完全に眠っていたわけではない。普段から足音を立てない友人がやってきたときも気づいてはいた。ただ、目を開けるのが億劫だっただけだ。
不意に唇を重ねられ、少しだけ驚く。
だが石鹸の香りが心地よくて、催促する舌を無抵抗に受け入れた。
眠気も相まって、ごく自然に快い感覚だけに身をゆだねることができる。
濡れた音を立てて口づけをかわしているうちに、毛布越しの身体がもどかしく思えてきた。
「……入れ」
毛布をずらしてうながすと、ホームズはすばやくベッドの中へともぐり込んでくる。
「髪はきちんと拭いてこい……」
「そのうち乾く」
これは合理主義とはいわない。単なる怠惰だ。
だがワトソンは今度ばかりは蹴り出すことを思いつかなかった。代わりに濡れた黒髪に指をすべらせ、まともな肌の色になった頬に唇を押しつける。
「今夜はここで寝る気か?」
意地悪く尋ねてやれば、同じくらいに揶揄を含んだ声が返ってきた。
「きみが、寝かせてくれるなら」
「それは保証しかねるな」
二人は顔を見合わせてくすくすと笑い、生意気な相手の口を封じるためにまた深い口づけに興じていった。

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