ホームズ/ワトソン

2010_SherlockHolmes,[R18]

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事件解決2

愛用の煙草の匂いが汗に混じる。だが今夜はそれだけではない。
名探偵は、自分を抱く男の観察を無意識に始めていた。
指に残る硝煙の匂いは、夕方の捕物で銃を撃ったときの名残にちがいない。四発中、三発当たった。軍人としてはすばらしい腕だ。急所の外し方も、医者としてすばらしい。その二者が両立するかはさておいて。
普段より火照っている身体は、格闘の余韻。勝利と成功に昂ぶった心がまだ胸の中で熱く燃えさかっている。もう三人ほど相手にすれば、体力を消耗して今ごろは眠りについていた。
抜き差しされる男根の硬さと大きさ、そのリズムからもそれはうかがえる。
「ホームズ……」
喘ぎの混じった呼びかけにうなずき返し、見なくともわかる形のよい耳を指でなぞった。彼もこちらの耳へ触れてくるが、その形状を気にしたことはおそらくないはずだ。こちらは、暗闇の中で唇だけを使っても彼の耳だとわかる自信があるというのに。
だがそれを実証してみせる前に、唇をキスでふさがれた。
「ぅん……」
わずかにブランデーの味がする。
キスは嫌いだった。原因は幼少期に遡り、祖母が要求してくるベタベタした親愛のキスだったとは思うが、母がよこす砂糖菓子のような甘ったるいキスも、苦痛でしかなかった。血縁でない女性は殊更に苦手だ。キスのあいだになにをされるかわからない。
だから今、彼の舌を追っている自分が不可解ではある。ごわついた口ひげの感触に嫌悪を覚え、執拗に絡みついてくる舌から逃れようとし、あごを伝う唾液をもっと不愉快に感じてもいいはずだった。
その矛盾について明文化を避け、同調する脈の速さに意識を向けた。
あと七回のストロークで彼は終わりを迎える。
時間と圧迫感からそう判断して、腰をずらし角度を少し変えた。張り出した部分が狙いどおりの場所に当たり、息が止まりそうになる。
「っ、はっ、ぁ……」
喘ぎながらも必死に彼にしがみつき、絶頂までの秒数を壁の時計でカウントする。
「んぁあっ、ワトソ……!!」
ラストは予想どおりではなかった。
自分の声の大きさと、首まで飛び散った精液の勢いと、そして全身を突き抜け蹂躙していった快感。どれもが待ち受けていた以上で、明晰な頭脳にぼんやりと霞がかかった。
「ホームズ?」
いたわるような、甘い声。汗で湿った髪をかき上げる硬い指。
平常の感覚を取りもどすのに造作もない。このあとのやりとりはほぼ決まっている。
「ワトソン……」
軽いキスと、優しい微笑み。つられて微笑み返す。
「前回より……一分半早かったぞ……」
「ホームズ!」
退役軍人の容赦ない頭突きをくらい、名探偵は自らのベッドに沈んだ。

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