キョウリュウ詰め

2013_キョウリュウジャー,[R18]

獣電戦隊キョウリュウジャー:単発いろいろ


『興味ないかと思ってた』


プレイボーイの自宅のベッドは、意外にも狭苦しいシングルだった。
こんなところに女の子は呼べない、と彼は笑いながらジャケットを脱ぐ。放り投げられたそれは、なにが入っているのか見当もつかない段ボール箱とコンテナボックスの上に落ちついた。
青白い蛍光灯の下、箱の合間に積み上げられた本やら紙束の塔を崩さないように注意しながら、ダイゴは部屋の突き当たりにある狭いベッドまでたどりつく。
持ちもの全てがリュックひとつに収まる自分とは正反対の生活をよく目にしてはいたが、それがよりによってイアンというのは不思議な気がした。自分と同じ、放浪の自由人だと思っていたからだ。
脱いだブーツを砂で汚れた床に放り出し、二人はなぜか、冷たい壁に寄りかかって並んで座っていた。少しばかり間の抜けた時間だが、居心地が悪いわけではない。このままなにもしないで時間を過ごすのもいいと、頭の片隅で思った。
「ちょっと意外だったな」
「なにが」
言い出した男は前を向いたままだ。なにを考えているのか、薄く笑みを浮かべて雑然とした自室を眺めている。
「SEXなんて興味ないかと思ってた」
「んなわけねえだろ」
イアンがこちらへ視線を向けた。
目が合ったのが合図だったのか、二人は同時に手を伸ばす。つかみ合ったまま横向きに倒れると、あまり頑丈そうに見えないベッドが軋んだ。
脚を絡め、手は相手のシャツの中へ、あるいは脱がそうとして裾を引っぱる。交わす言葉はない。口は相手の肩や首に歯型をつけるのに忙しかったから。
服越しに身体をぶつけ合っているうち、否が応でも熱くなってきた。もとよりそれが目的だ。
ダイゴはイアンの肩を押さえ、彼の腰の上に乗りかかった。イアンのほうもとくに異論はないらしく、ただまっすぐダイゴを見上げる。
シャツを脱ごうとすると、イアンが物欲しげに喉を鳴らした。シャツから頭を抜くか抜かないかのうちに、下から腕を掴まれ勢いよく引き寄せられる。
鼻がぶつかる寸前でなんとか腕を立てたダイゴは、こちらを見つめる熱っぽい目が欲望を隠そうとしていないことを悟った。
「……こっちも、ちょっと意外だったぜ」
「へえ?」
自分で言い出しておいてその先の説明が億劫になったダイゴは、革のパンツに手をすべらせた。イアンはくすくすと肩で笑い、ダイゴが触れた尻ではなくフロントポケットからコンドームを出す。
「そこかぁ」
受け取ろうとすると、彼は自分の頭の向こうを指さしてみせた。見ればヘッドボードに迫った棚の隅にボトルが置いてある。
「女の子は来ないんじゃなかったのか」
「そう、だから独り寝用」
軽口に噴き出しながら腕を伸ばした。イアンはそのあいだにゴムのパッケージを開け……正しい協力体制とはこういう状態だ。

「んぁ……っ」
それまで乱れた息しか吐かなかったイアンの口から、別の声が洩れはじめる。ダイゴは彼の腰を抱え、長い指をできるだけ奥まで這い込ませようとしていた。ゆっくり、落ちついて馴らさなければ、相手を傷つけてしまう。だから辛抱強く、彼の中を広げていく。
「……ぁっ、もう、いい……早く……」
シーツを掴み、細身の裸体をよじらせて、彼は刺激に喘ぐ。
我慢がきかなくなったダイゴは、イアンの身体を抱き寄せた。彼の腕が自分にまわされて、なぜか安堵する。
「……っ!!」
ダイゴがイアンを貫く瞬間、二人は同時に息をのんだ。
イアンの屹立を腹で押しつぶすように、ダイゴは彼を抱きしめたまま激しく揺すり上げる。全身で彼を感じ、彼に欲情しながら。
欲しかったのが、この快楽なのか、イアン本人なのか。今となってはもう覚えていない。部屋に響く嬌声がどちらのもので、絡み合う手足がどちらのものなのか、どうでもいいことであるように。
嵐にも似た熱情が過ぎ去ったあと、二人は並んで寝転び、しばらく互いの呼吸だけを聞いていた。
やがて、イアンがかすれた声を出す。
「……終わりか?」
「まさか」
「だよな」
身を起こし、その勢いでダイゴを組み伏せた彼は笑みを浮かべている。
今度は彼の番。いや、自分の番というべきか。
こぼれそうなほどのローションを後ろに塗り込まれ、なにが快感なのかわからなくなってくる。濡れた音と荒い呼吸とに耳を犯されて、触れられてもいないダイゴの中心はすでに上を向いていた。
「やべ……もうイきそ……」
思わずそんな感想を洩らすと、彼は小さく苦笑した。
「抜け駆けはなしだぜ」
ローションまみれの手が、胸に触れて腹まで撫で下ろしていく。くすぐったさに身を震わせると、大きく息を吐き出すのが聞こえた。
「Shit……」
苛立たしげに呟いて、彼はダイゴに覆いかぶさってくる。
「男」にまわったイアンがそれほど紳士的ではないことにも、ダイゴは驚かなかった。この部屋に足を踏み入れたときから、無意識に予想していたことだった。
「うぁ、ぁんっ……」
必死に相手の身体にしがみつき、つながっている部分以外からも熱を得ようとする。おそらくはイアンもそう欲していて、だからダイゴの肌に幾度も唇を押しつけ、噛み痕を残すのだ。
「もっと……イアン、もっと激しく……」
抱きしめるだけでは足りず、声に出してせがむ。
なだめも焦らしもせず、イアンは真摯にダイゴを貪った。

シャワーを浴びて、ほんの少しだけベッドに横になるつもりが、急に眠気が襲ってきた。
今はイアンが使っている浴室から、水音が聞こえてくる。
「たしかに、意外だよな……」
女連れでいることが多いわりに、イアンからは生々しい執着を感じない。かといって女性を雑にあつかうわけでも、ないがしろにすることもない。ベッドの中まで優しくエスコートしているであろうことはたやすく想像がつく。そのベッドも、きっと軋んだりはしない。
遊び慣れているのも嘘ではないだろうけれど、彼の執着は他のところにあるのだ。わずかに語った相棒との別れ。資料や戦利品があふれるこの部屋。そして、なんの気取りもなく肌を重ねるこの関係……
その全てが、小気味よかった。彼はまちがいなく、自分が認めた男だった。
「……………」
指先が、顔にかかった髪をかきあげる感触で目を覚ます。
いつのまにか眠ってしまっていたらしい。
「髪は乾かせよ」
身体を起こしながらそう呟くイアンの腕を、ダイゴは力を込めて掴んだ。突然のことに対応しきれず倒れかけた彼は、大きな目をさらに見開いてダイゴを見つめる。
「イアン」
名を呼ぶだけで、意志は通じる。二人のあいだにある執着をかたちにするなら、そういう関係になるのだろう。
二人はその日初めて、唇を重ねた。

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