キョウリュウ詰め

2013_キョウリュウジャー,[R18]

201305黒金
201305黒金


『脱がしやすい服選んでよかったぜ』

マンションのエントランスの前で、彼は素直な驚きの声を上げた。
「イアン殿のお宅はずいぶんと大きいのでござるなあ!」
「……ちがうから」
そこからエレベーターで自宅のドアに辿りつくまでに、集合住宅の仕組みを説明したまではよかったが、今度はドアを開けたとたん、リアクションに困ったという顔をされる。
「……これはまた、ずいぶんと質素でこぢんまりしたお宅でござるな」
「洗練されてるって言え。これでも広いほうなんだよ。ボーイやアミィちゃんの家は特別!」
ワンルームではあるが面積的には、スピリットベースよりは広いはずだ。一般的には「高級」「贅沢」の部類に入る。普通「こぢんまり」という単語は出てこない。
世間知らずというにはあまりにも頭の中身の情報がちがいすぎて、近ごろでは説明しなくてもなんとなくニュアンスで感じてくれ、という状態でなんとかなっている。
「入れよ」
「しかし、拙者……」
空蝉丸は肩を落とし、自らを見下ろした。
ずぶ濡れ、アンド泥だらけ。ハウスクリーニングも完璧な部屋の床に、上がるのをためらう気持ちもわかる。
「いいんだよ。なんのために連れてきたと思ってんだ」
イアンは空蝉丸の腕を掴み、そのまま部屋を横切ってバスルームまで引きずっていった。
「シャワーとか使い方はわかるよな? わかんなかったら壊す前に呼べよ。そこにさっき買ってきたの置いとくから、上がったら適当に着てろ」
「か、かたじけない!」
直角に身体を曲げる空蝉丸を適当にあしらい、洗面所を出る。
「さて……」
まずは着替えて、それから濡れた床を拭こう。イアンはジャケットを脱ぎながら、クロゼットに向かった。

空蝉丸を見つけたのは、雨が上がったばかりの夜の街だった。
イアンは当然一人ではなかったが、あの目立つシルエットに気づいてしまったからには、放っておくわけにはいかない。
どういう経緯かはわからないし興味もないが、彼はどうやら酔客のケンカの仲裁をしているらしかった。振り回される腕や脚は器用によけているものの、とばっちりを食うのも時間の問題だった。余計なことに首を突っ込むなと、現代人として最低限のルールは教えてやるべきだ。
「おい、ウッチー……」
イアンが声をかけたのがまずかったのだと思う。一瞬よそ見をしたせいで酔客に思いきり殴られた空蝉丸は、よろめいて雨上がりの水たまりへ倒れ込んだ。派手な展開に犯人たちはあわてて逃げていってしまったので、結果的に空蝉丸はケンカを止めたことになる。
あとに残された濡れねずみを目撃してしまっては、イアンもそのまま立ち去るわけにはいかない。
必死の言い訳で今夜の相手に謝り倒し、彼女と朝まで過ごすはずだった自宅に、彼を招くはめになった。
「どうしてこうなっちまったんだ……」
モップに寄りかかって、掃除を終えたイアンはひとり呟いた。ほんとうなら今ごろは、ワインで乾杯でもしていたはずなのに。どうして天然ござる侍を風呂場に叩き込み、自分は床掃除をしているのか。
「彼女」より「彼」を優先させることには迷いがなかった自分に、イアンはまだ気づかずにいた。

「さっぱりしたでござる!」
風呂から上がってきた空蝉丸を見て、イアンは思わず口笛を鳴らす。
「意外と似合うぜ」
褒められた空蝉丸は、照れくさそうに笑った。
なんのアクセントもコーディネートの必要もない、ただの白シャツとジーンズだったが、もともと手足が長く顔立ちも端正な彼は、黙って立っているだけでかなり様になる。ボタンをひとつかけちがえているのはご愛嬌というものだろう。
帰り際、適当に見つくろって買ってきた服だった。なにしろ空蝉丸の一張羅が泥まみれになってしまったのだ。朝までにどうにもならなかった場合も考えて、そのまま外に出ても見苦しくはない程度にと考えての選択だった。
残念ながら、この家には彼が着られそうな服はない。イアンが小柄なわけではないが、タイトな服が好みなのもあって、背丈も肩幅もある空蝉丸には少しきつそうなものばかりだった。
「ところで、その髪留めてるのは……」
「ああ、このかんざしはアミィどのからいただいたもの……コンコルドというのだそうな。あ、ドライヤーもお借りしたでござる、かたじけない」
「はあ……」
どこからツッコミを入れていいのかわからず、イアンは肩をすくめるだけにとどめた。
かの厳格なジェントルにまで気に入られ、アミィの屋敷に半分居候の状態になってきていることは伝え聞いていたが……彼のなじみっぷりは、あらゆる環境への適応力を要求され生きてきたイアンやダイゴでさえ驚くことがある。
「まあいいや……そこ座れ。怪我手当てするから」
「いや、それほどの怪我では……」
恐縮する空蝉丸をむりやりソファに座らせ、殴られた口元を検分する。下あごが痣になりかけているようだ。消毒液を塗り、念のため絆創膏を貼った。
「うちの戦隊はおせっかいばっかりか……」
放っておけないと言ってはすぐに首を突っ込む。その結果がこれでも、後悔など微塵もない。空蝉丸を拾ってきた時点で自分もそちら側だという事実については、あえて考えないことにしている。
ふと顔を上げると、空蝉丸がじっとこちらを見つめていた。
「……なんだ?」
「イアン殿の瞳は、黒ではないのだな」
しげしげと覗き込んでくる顔には単純に好奇心しかなかったが、その距離に少々面食らった。
「それに……」
まっすぐな眼差しはそのままで、長い指が頬に触れる。ゆっくりと唇をなぞられ、イアンはつい息を止めた。
「紅を差しておられるのかと思っていた。ずいぶんと赤い……」
「硬派なわりに、誘い上手じゃねえか」
これは、そうとしか思えない。
指に音を立てて口づけると、彼は驚いたように目を見開いた。だが手を引くことも目を逸らすこともしなかった。
その指先に軽く歯を立て、舌でつついても、彼は恐れも狼狽えもしない。
「女の子が苦手ってのは嘘か?」
「滅相も……」
普段より息を多く含んだ声が、途中で途切れる。イアンはジーンズのひざに手をかけながら、もう一度彼の指を噛んだ。
「じゃあ男は?」
「……だれとでもというわけではござらぬ」
「へえ……」
紅いと言われた唇を、彼の頬に押しつける。
彼はくすぐったそうに肩をすくめ、しかし無邪気に笑みを浮かべた。

「脱がしやすい服選んでよかったぜ」
一番上からひとつずつずれていたボタンを外す。
ソファに身をあずけた彼は真剣な顔で、イアンを見つめていた。その視線がやけに気になって、遮るつもりで身をかがめ、唇を重ねる。
空蝉丸の舌がイアンの唇を舐めた。誘われるまま、イアンは彼の舌を吸った。
「ん……ふっ……」
彼は目を閉じて従順に応える。慣れているとまではいかないが、全くの初心ではない。いかに快感を得るかは心得ている様子だった。
舌先が糸を引いて離れると、彼はまぶたをわずかに押し上げる。平素は禁欲を貫くことで強さを保っているように見える彼だが、快楽へ身を委ねることを恐れていない恍惚の表情を目にし、イアンは尋ねずにはいられなかった。
「なあ……天然なのか? 本気で誘ってるのか?」
その問いに、当然ながら空蝉丸は首をかしげる。天然なのはわかりきっていた。
天然侍は「よくわからぬが」と前置いて、硬い指でイアンの唇を拭う。
「触れたいと思った。それは触れられたいと同じこと……言葉にするのは難しいが……」
確かにわかりづらい。だが、わからなくはない。愛しいと思う気持ちは、思われたいと同じこと。互いにそう感じたから、恐れずに踏み出せるのだ。
「そうだな……じゃ、言葉以外で頼む」
かけちがえていたボタンは全て外れた。
イアンは露わになった胸元に唇を落とす。深いため息に誘われて、その胸に吸い痕を残した。小さな突起を吸い上げれば、彼はイアンのシャツに縋って熱い息を洩らす。唾液で濡れたその場所を指先でいじりながら、彼の顔を覗き込むと、眉根を寄せた表情がねだっているように見えた。
事実、空蝉丸は欲しがっていた。
「イアン殿も……」
もどかしげにイアンのボタンをいじったので、不器用なその手を取り、先ほどのように口づけて甘く噛んでやる。
「わかってるよ、ハニー」
「?」
言葉の意味がわからない相手には、どんな口説き文句も睦言も効かない。今はその不自由さが楽しい。
自分でシャツのボタンを外し、胸を重ねる。鼓動が直に伝わってきた。相手の肌がひどく熱いのは風呂上がりだから、だけではないだろう。
「ひんやりして、心地よい……」
満足げな呟きとともに長い腕が絡みついてきて、腰を抱き寄せる。イアンは彼の鎖骨に新しいキスマークをつけながら、ジーンズの留め金を外した。
「ああ……っ」
手を差し入れて彼自身を握り込むと、素直に喘ぎ声が上がる。素直な反応は好きだ。声も悪くない。気分をよくしたイアンは、自分の唇を舐めた。
「400年ぶりってことなら、サービスしなきゃな……」
「イアン殿……っ!?」
彼の語尾が上ずったのは、イアンが床にひざをつき、握り込んでいるものの先端を舐め上げたからだった。
「あの……ぁあっ!」
舌先で裏をなぞり、輪郭を辿っただけで、即座に反応する。
「そこはっ……ぁんっ」
先端が濡れはじめたそれをくわえ込んで、さらに口の中で愛撫する。本人と同様に素直なそこは、大した技巧も必要なく、見る間に硬さと大きさを変えていった。
「イアン、ど……」

このまま彼の精を口で受けてもよかったが、まだ解放しないうちに、イアンは顔を上げた。
頭上から絶え間なく喘ぎが降ってきて、しかも育っていく欲望に触れつづけ、自分だけが平然としていられるわけがない。
「悪いな、おれも男は久しぶりで……我慢できなくなった」
「は……」
半開きの唇に音を立てて口づけ、自分もボトムの前を開けた。すでに硬くなりかけている中心を、空蝉丸に押しつける。
「んぁっ……」
女性器とは全く異質の、同じ器官だからこその得がたい感触が、強い快感となって身体を突き抜けた。空蝉丸の身体も大きく震え、縋りついてくる手の力が強くなる。
「まだ……んっ、置いていくなよ……」
腰を揺らしながら長髪をかき上げて耳元に囁くと、彼はたまらないという顔で首をすくめ、イアンを抱きしめる。
「あぁっ、もう、や……っ!」
腰を反らせて、彼は欲望を吐き出した。その残滓はイアンの腹を汚す。直後に達したイアンは、空蝉丸の胸に白濁を散らすことになった。
「だいじょうぶか……?」
惚けた顔で大きく息をついている相手に声をかけたが、彼はなんとか口角を上げてみせた。返事もすぐには出てこないらしい。
イアンはテーブルの上からティッシュの箱を引き寄せる。
ぎこちなく起き上がった空蝉丸は、腹を垂れ落ちる白濁を見て情けない表情になった。
「面目ない……着替えたばかりの服を……」
「どうってことねえよ。これも洗えばいい」
「しかし、着替えが……」
なおも言いつのろうとする彼の口を、軽いキスで黙らせて。
「これから、必要か?」
笑い出す彼をベッドへと誘った。


尺その他の都合でカットになったシーン。

着替え調達編:
「ウッチー、下着なに履いてんの? フンドシ?」
「まさか! 今はジョックストラップでござる」
「!?」
「締まりがよい上、褌より着用が楽なのでござる。アミィどのの国では、強い男は皆これを履いていると伺ったゆえ…どうなされたイアンどの?」
「いや…期待とか予想とかそういうの飛び越えたブレイブにちょっと動揺してるだけだ…orz」

ゴム装着編:
「おおーこんなに薄いのにどんなに伸ばしてもちぎれぬとは! ぬるぬるでなんか気持ちいいでござるー!」
「遊ぶな! あと伸ばすな! このままの状態で、こうやって…」
「なんと! 手品みたいでござるな! もう一回!」
「自分のにつけろよ!」
「これをでござるか?(伸ばした) あっ(手がすべった)」
「っ(ぬるぬるが顔にかかった)」

イアンの自宅と生計がいちばん謎。女か、やはり女なのか。

作成日: 2013年5月29日(水) 22:01

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