ホームズ/ワトソン
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お仕置き
背骨をそっとなぞると、逞しい背筋がもどかしげにうねった。
「ワトソン……」
「なんだ?」
喘ぎのあいだから囁かれる声に、ワトソンはわずかに耳を寄せる。その拍子につながりが深くなり、ホームズはシーツをつかんだ。
「早く……」
「聞こえないな」
たとえほんとうに聞こえていなくても、彼がこの状況で訴えることといったらそれほどバリエーションは思いつかない。だがその言葉を無視してひざで脚を押し広げてやる。二人がつながった部分が濡れた音を立てた。あまりの淫らさにワトソンは喉を鳴らしたが、ホームズのほうはまだ悪あがきをしたいらしい。
「この体勢は、きみも楽ではないだろう……早く済ませて心身ともにリラックスしようじゃないか……んぁっ」
四つん這いで尻を突き出している男が必死に紳士の顔を繕おうとしているのが、ワトソンから見るとどこか滑稽だった。
もう一度、汗ばんだ背中に浮き出た骨をなぞる。
自然と今日の「冒険」を思い出した。あと一歩でこの名探偵は荒々しい馬車に轢かれていたかもしれない。手に汗握る体験というよりは、寿命が縮まりそうな事件といったほうが正しい。
「あのとき私がきみを引き止めなかったら、この背骨は今ごろジグソーパズルのようにバラバラになって、私はピースを集め並べ直すのに苦労しただろうな」
ホームズの背中が再び震える。それが、自分の背骨が砕ける想像をしたからなのか、それとも快感の波に耐えようとしているのか、背後からでは判断がつかない。
「だがそうはならなかった……きみのおかげだ、ワトソンくん……」
震える声はすすり泣きにも聞こえ、ワトソンは少しだけ溜飲を下げた。
しかしこちらも心臓が止まるかと思ったのだ。感謝の言葉くらいではとても足りない。
ゆっくりと腰を引き、そして再びゆっくり、狭まって拒もうとする内襞に押しつけながら侵入する。
「あっ、あ、そんな……」
たまらないといった風情の泣き声が愉快だった。
こちらもつらくないといえば嘘になるが、それよりも彼を追いつめたい。ワトソンは意地悪く腰を揺らして、名探偵の理性を剥いでいく。
「ワトソン、お願いだから、ワトソン……」
哀れなすすり泣きに心を動かされかける。しかし彼は役者だ。こんなところで妙な矜持にしがみついたりはしない。これにだまされほだされて、いつも彼の術中にはまってしまう。このジョン・ワトソンが毎度従順ではないということを、もっと思い知らせてやらなければ……
とはいえ、緩慢な行為に自分でも耐えがたくなってきて、苦肉の策としてワトソンは一度自身を引き抜いた。彼の内側は追いすがるようにワトソンを締めつけ絡みついてきて、それだけで欲望がさらに質量を増してしまいそうだった。
「ぁあ……っ」
身をすくめたホームズは、濡れた目で愕然とワトソンを見返る。
「なぜだ、きみは……」
きみは私を手ひどく犯したがっている……彼はこんなときでも真実をずばりと言い当てるのだろう。
ワトソンはホームズの肩をつかんで仰向かせ、その胸を自分の胸で押しつぶした。猛った屹立がぶつかり合って、ホームズは自然と腰を擦りつけてくる。そうしておいて、熱に浮かされた囁きを投げかけてくるのだ。
「こんな程度の刺激で……」
そう、満たされるわけがない。だが、彼の予想どおりにするのは癪だった。名探偵の裏をかけるのは、こんな場面しかない。肉体的にはともかく、心理的に彼が最も不得意とする場面は今しかないのだから。
「……推理したまえ、名探偵」
ワトソンは薄い笑みを浮かべ、上気したホームズの頬に唇を落とした。
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