黒崎/池田

2014_ST赤と白の捜査ファイル,[R18]


煮詰まった夜


深夜3時、STラボ。
朝までにそれぞれの分析結果を求められたメンバーは会話もなく各自の作業に没頭していた。
不意に、なにかが床の上に落ちた音がする。隣のラボにこもっている赤城以外の全員がふり向くと、池田があわてた様子でペンを拾い上げていた。
「仮眠してきていいよー、どーせぼくらの分析が終わるまでキャップはとくにすることないんだからさー」
青山が椅子をくるくる回しながら言うのは、わかりにくい気遣いだが、疲労困憊の池田は気づかなかったようだった。
「そうはいかない、報告書もあるからな……顔を洗ってくる」
先代キャップの百合根ほど意固地ではないが、強すぎる責任感はいい勝負だと、メンバーは互いに顔を見合わせる。
「ほんっと、頑固なんだから……」
「黒崎さんが、軽く手刀でもお見舞いすればいいんじゃない?」
翠が笑顔で言った。悪い考えではないと思う黒崎の横で、山吹がたしなめる。
「手刀で人は気絶させられませんよ……黒崎さん?」
席を立ってから、トイレに行くと山吹に告げてラボを出た。

鏡越しに目が合った。池田はハンカチで顔を拭いて眼鏡をかけなおす。
「黒崎か」
生真面目な表情が少しだけ和らいだ。
「悪いな。これが終わったら食事でも……」
努めて明るい声を出しながら入り口に立っている黒崎の横を抜けていこうとするから、すれ違いざまにその腕を掴む。
ぎょっとしてこちらを見る眼鏡に、自分の顔を近づけた。
「おい……」
背けようとする顔を押さえて口づける。
「むっ……」
唇を割って舌を這い込ませれば、さっき彼が飲んでいたコーヒーの味がした。煮詰まりすぎて苦いだけだと思いながら、なおも舌を吸う。
息が上がった池田は、弱々しく黒崎を押しのけた。
「あのな、ここがどこか……」
「わかってる」
捜査一課の面々が押しかけてこなければ、STメンバーしかほぼ使うことのない、廊下の突き当たりの男子トイレだ。
「仕事中だぞ……」
眉をつり上げる池田を、手前の個室に引きずり込んで鍵をかけた。迷わず鍵に伸ばそうとする手を押さえて再び唇をふさぐ。
「んぅ……っ」
黒崎のシャツを掴む手に力がこもる。押しやろうか、引き寄せようか逡巡しているのだろう。舌も自分から絡んでこないだけで、逃げている気配はない。
「……黒崎!」
さすがに怒鳴るのは憚られたのか小声だったが、濡れた唇を拭う仕草も、上気した頬も、眼鏡の奥の濡れた目も、部下を叱っているようには見えない。
黒崎は壁に池田を押しつけ、耳元に囁いた。
「俺を見た瞬間に匂いが変わった」
「黒……」
眼鏡を掛けて黒崎とはっきり認識した瞬間。黒崎に腕を掴まれた瞬間。池田の感情が揺らぎ、体温が上がったのを感じた。
心当たりがあるのかないのか、池田は目を泳がせて無意味に眼鏡を押し上げる。
「ちが……」
違わない。
確信した黒崎は、池田の両腕を後ろへまわし、片手で押さえた。池田も非力ではないが、疲れている今ならば簡単に封じ込める。背広は着ていなくてベストだけだから、肩の動きもそれほど制限されない。
もう片手でベルトを外す。
「やっ、やめろ……」
上ずった声が誘う。黒崎は彼の下着の中に手を突っ込み、性急に愛撫を開始した。
「バカ……うっ、……んっ!」
意識が別のところへ移ったせいで、腕の抵抗が弱まるのを感じる。池田は細いあごを反らし、唇を噛んで、強制的に煽られる快感に耐えていた。
黒崎の手の中で、そこはすぐに硬く大きくなっていく。最後に彼の部屋に泊まったのは半月も前だったと今さらながら思い出す。この男も自分で慰めることがあるのだろうかと考えた瞬間、握る手に力がこもった。
「んっ、汚れる……っ」
先走りが黒崎の指を濡らし、猛った自身にまとわりついているのを感じたのか、そんな言葉が洩れた。それもそうだと黒崎は思い、ポケットからコンドームを出す。
「だから……どうして持ってるんだ……」
問いには答えず、パッケージを食い破って彼に着けた。それから、池田の腕を解放して壁のほうを向かせる。
「黒崎!?」
ずり落ちそうになるズボンを押さえて壁に縋りついた彼を、後ろから抱きすくめた。なおもなにか言いかける彼の耳に舌を這わせると、言葉は意味のない喘ぎに変わる。
それでも彼は今後の展開を悟ったらしい。
「ダメだ……こんなところで……」
「もう遅い」
黒崎は耳に囁く。池田をここまで乱れさせて、黒崎だけが平気なわけはない。ジーンズの前は限界に近いほどきつくなっている。抱きしめられている池田もそれはよく理解しているはずだ。
もうひとつ出したコンドームを池田に開けさせて、そのあいだに自分の前を開ける。
そして池田のボトムをむりやり下ろし、すでに頭を持ち上げている自分の欲望を彼の腿のあいだにねじ込んだ。
「……っ!!」
脚へ押しつけるようにして腰を揺らした。硬い筋肉に挟まれる感覚がひどく快くて、こぼれそうになる声を殺すのも辛い。
だがそれは池田も同じだった。
「なっ、なん、これ……ぁっ」
なにか抗議しようとしたらしいが、声が裏返りかけて自分の口を押さえた。反り返った黒崎が池田の裏側に当たり、袋から竿まで擦り上げられたからだった。
「ふ、ぁっ……」
横から顔を覗き込むと、眼鏡の奥で赤く染まった目元が滲んでいる。
口先はどうでも体は素直な男だが、今日はやたらと敏感になっている気がする。どこへどう触れても常にないほど反応し、それを押さえ込もうとしてさらに鋭敏になっていく。
耐えながらも乱れる姿が妙にいじらしくて、それでも黒崎自身はまだどこか物足りない気がした。
肌に触れていないからかもしれない。
思いついた瞬間に彼のネクタイへと手を伸ばしていた。Yシャツのボタンを適当に外したが、ベストがじゃまをしていると気づいて裾のほうからシャツの中へ手を突っ込む。
「……!?」
硬い肌が、熱く湿って掌に吸いついてくるようだった。指先に当たった胸の突起を押しつぶすように弄ると、彼は息を飲んで全身を強ばらせる。黒崎はさらに強く腰を揺すり上げ、今度こそ洩れそうになった声を、池田の肩に噛みつくことでやりすごした。
「んっ、ふ……ぅっ」
池田が唇を噛みしめ、目の前の壁に縋りついて爪をすべらせた。熱くなった肌をまさぐられ、擬似的にとはいえ後ろから犯されて、もう自分一人では立っていられない様子だ。
ここまでくればいつもなら甘い声を上げるのに、喉の奥で食い止めているのがもどかしい。
「やっぱり……挿れたい」
「え!?」
本気で焦った声が上がり、彼はふり向こうとする。
黒崎は腰からゆっくりなぞり下ろし、双丘のあいだへ指を差し入れた。
「……っ!」
「大丈夫、体は支えてる」
囁いてやると、池田は潤んだ目でこちらを睨みつけ、壁に縋っていた両手を自分の口に持っていった。
「んん……っ!!」
黒崎の指が奥へ入り込んで、池田の体がまた硬くなる。力を抜けというつもりで、シャツの下の肌を撫でさすった。だが彼の脚のあいだにある陰茎はさらに締めつけられる。
「ふっ……」
押さえる両手の隙間から小さな喘ぎがこぼれつづけていて、黒崎の胸にのしかかってくる背中の重みも、触れられずに張りつめている彼自身も、先を急かしているようだ。
それを無視して焦らせるほど、黒崎は性悪でも余裕のある男でもなかったので、指を抜くのもそこそこに猛った熱を押し込んだ。
「ふ、ぅんんっ!」
痛みも快感とも声ともに飲み込んで、池田はただ身をよじる。ろくに慣らさなかったせいなのか、体勢のせいか、いつもより締めつけが強い。
「くぅ……」
こちらも声が出そうだ。思わず彼の白い首に噛みついていた。シャツの下の熱い体を抱きしめ、奥を抉るように何度も突き上げる。
「んぅ、んっ、ん……」
口を押さえながらも、池田は黒崎の硬い胸に身をすり寄せ、自ら腰を揺らしてねだった。
涙がにじむほど強く目をつぶり、だれか来るかもしれないと声を殺し身を固くしても、体だけは黒崎を激しく求める。声が嗄れるほど喘ぐより、全裸で足を開くより、よほど淫らに感じられた。
こちらも我慢など考えの外で、彼の肩口に自分の呻きを吸わせたまま、最奥へ楔を打ち込んだ。
「……っ!!」
池田の体が大きく反る。その背中を受け止めて、黒崎は自分も彼の中で終わりを迎えた。

横壁の両側にもたれ、二人はそれぞれに着衣を直していた。
黒崎はほとんど手間取らなかったが、池田のほうはそう簡単にはいかない。剥いたのは自分だからさすがに責任を感じ、曲がったネクタイや折れた襟を直してやった。
「いつもより……大きくなってたんじゃないか……」
ハンカチで口元を拭きながら、彼は横を向いて言いにくそうにぼやいた。そんなことがあるわけはないと黒崎は首を横に振ったが、仮に事実だとしても、池田だっていつもより乱れていたのだからお互いさまだろう。
「くそっ……どんな顔で戻ればいいんだ……」
ぶつぶつと文句を言いながら、自分の頬をさすっている。まだ息が乱れ汗ばんでいるのを差し引いても、艶めいた気だるさが残る表情は隠しようがない。黒崎もこの顔を他人に見せるのは嫌だと思った。
彼を引き寄せ、その頬に口づけながら囁く。
「このまま仮眠室へ行けばいい」
「……そういう作戦か」
眼鏡を押し上げた池田はため息混じりに呟いて、黒崎の胸を拳で軽く叩いた。

ラボに戻った黒崎を見て、翠がかけていたヘッドフォンを外した。静かな夜だからこそ聞こえてくる雑音を耳に入れないための装備だ。少し気まずい思いで頭を下げると、彼女は首を振って隣のラボを指さした。赤城が椅子に座ったまま豪快に口を開けて寝ている。
「一回病院で診てもらったほうがいいわ、あのイビキ」
「医者の不養生というやつでしょうか」
山吹が苦笑しながら応じる。
黒崎が自分の席に腰を下ろそうとすると、青山がスナック菓子を貪りながら顔はモニタに向けたままで話しかけてきた。
「黒崎さん『も』、寝てきたら?」
悪くない案だが、黒崎は山吹に自分の意見を耳打ちした。山吹は動じもせず青山にその言葉を伝える。
「今は、池田キャップと同じ空間で眠れる気がしないそうです」
「あ、そ……」
青山は呆れた顔で天井を見上げ、煮詰まりすぎたコーヒーでスナックを飲み下した。

(by NICKEL, Apr, 2015)

赤「今回の犯行は?」
桃「トイレの個室に連れ込んで立ちバックです」
赤「こいつ、初めましてじゃないぞ…さてはネタカブリだな」
百「ネタカブリ?」
青「やだなあキャップ、知らないの? どこのジャンルにいっても同じネタを使いまわすことだよ」
赤「こいつはなぜか警察モノで似たようなネタを使いまわす傾向がある。無意識なんだろうが、もはや定番と言っていい。まずはディケイドでアギトの世界、それから相棒、GSG9、そして今回のST…」
百「赤城さんもうやめてください! よくわかりませんがなんとなくツライ気持ちになってきました!!」

サイト改装中でほとんど見られないからこその自虐ネタです(真顔)。

送信中です

×

※コメントは最大500文字、5回まで送信できます

送信中です送信しました!