往壓/放三郎

2006_天保異聞妖奇士,[!],[R18]

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事後

目に入るものすべてが腹立たしかった。
部屋の隅へ蹴りやられた、哀れな愛読書も。
尻の下で皺だらけになっている着物も。
畳の上に転がって「腰が痛ぇ」などとぼやいている年寄りも。
その年寄り相手に、我を忘れて耽った己も。
この部屋にあるものをなにもかも川へ放り込んで、なかったことにしてしまえたら。
どんなにか気が楽になるだろう。
己にとっては、この忌々しい男と入水心中という結果になるわけだが。
「……小笠原さん」
忌々しい声が、疲れた調子で呼ぶ。
「なんだ」
こちらの返事もくたびれている。
「今のあんたなら抱きてえと思ったんだがな。そんな元気はもうねえや」
はは、と力の抜けた笑いを洩らす顔を見てみれば、雄の色気を醸し出していて。
抱かれてもいいと、一時でも思った己が情けない。
「では、おとなしく抱かれていろ」
再び熱を帯びる己の若さがいちばん忌々しいのだ。
よりにもよって、こんな男に。
腹立たしさと忌々しさを忘れるために、今しがた貪ったばかりの身体に乗りかかる。
終わったあとには二倍にふくれ上がっている自己嫌悪のことは、考えないようにして。

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